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57.社長が満足できる目標設定の仕方

2026年、新年になりました。
世間では4月ー3月決算という企業が多いかもしれませんが、1月ー12月決算という企業も少なくありません。
後者の決算期の企業であれば、新年になれば、前期の実績を踏まえ、新たに設定した今期の経営目標などを、「今年度はこれを達成するためにがんばろう!」と、社長から社員に向けて新年の挨拶が行われているかもしれません。

一般的に、業績が良くなったと評価するには、決算書上のなんらかの数値が好転、向上していることを指すでしょう。
売上額を上げようと思えば、営業部隊にテコ入れをしたり、稼働率の低い設備が稼働できるように仕事を受注したりという取り組みが考えられるでしょう。
コスト削減により製造原価の低減を行おうと思えば、残業時間が減るような取り組みを行ったり、設備稼働時間が短くなるように設備改善を行なったりさまざまなことが考えられるでしょう。

したがって、業績向上のための取り組みを行うために、経営目標を設定し、その目標達成を目指し、生産現場はそれに寄与するような取り組みを行うことが常識とされています。

A社長が抱えていた毎年のモヤモヤ

ある企業での経営目標の設定に携わった時のことです。
毎年、年度末近くになると、A社長はその年の取り組み状況を管理者から最終確認したり、試算表から経営数値を確認し、どの取り組みの成果がどの数値に表れているだろうかと確認したり、翌年の取り組み内容について、どんなことに優先的に取り組むべきかと悩みます。

A社長は、取り組み状況についての管理者からの報告に疑いを持っていました。「本当に効果を確認できているんだろうか。現場は何を見てそう言っているんだろう」と。
ですからA社長は、現場の社員が立てた現場目標も、その目標を達成するために行われた取り組みも、「それが本当に自分が考えている経営改善に良い効果をもたらしてくれているのか?」ということを常にモヤモヤと考えていました。
A社長が前年度の初日に、その年度の重要な取り組みとして経営方針を掲げ、全社員に発信しました。

それは「顧客満足度の向上」です。
それを評価するための目標値として、「クレーム発生件数の半減」「設備停止時間10%削減」を設定しました。
現場レベルでは、この目標達成のためにどんな取り組みを行うべきかを考え、「作業手順の確認、見直し」「段取り替え作業指導の実施により対応可能作業者を増やし、対応時間削減をする」という取り組みを設定しました。

この内容でスタートした前年でしたが、「進捗を常に見張っていないとどうなるのかわからない」という不安から、週一回は管理者を集め会議をし、その場で状況を確認するということを繰り返しました。

管理者から返ってくる返答は、「時間がないのでやっていない」「今は〇〇の生産が止められないので設備を使った段取り替えの指導ができない」など、できない理由のオンパレードです。
そして、年度末になると、作業手順は見直したことになっていて、実際に作業手順書のデータは対象のものは全て直近数ヶ月で更新した履歴が残っています。しかし、クレーム発生件数は半減どころか、倍増しています。それなのに、なぜか顧客満足度は明らかに上がっています。そう判断する理由は、「他社が対応できないからやってもらえないか」と依頼を受けたり、今までならこちらから単価交渉をお願いしないと対応してくれなかったところが、取引先側の方から「良い関係で取引を続けたいので、単価を〇〇%上げたい」とA社長が思っていたより高い上昇率で単価アップがされたのです。

また、生産が止められないと言っていた設備の段取り替えに対応できるようになった社員が、年末には3人増えていました。しかし、設備の停止時間が10%削減できたのかは分かりません。そもそも、年度の初めから、設備の停止時間がどのくらいあるのかもわからないのに、どうやって10%削減すると説明するのかとは思っていましたが、いまさら言っても仕方がありません。実際に現場で段取り替えをしている作業者に状況を直接確認したところ、今まで5時間かかっていた作業が2時間ほどで終わるようになったとのこと。そして、最近の日々の生産実績数を確認すると、段取り替えがある日の生産数は、A社長が思っているほど減少していなかったのです。
残念なことに、毎週会議をしているにもかかわらず、管理者からこの報告はありませんでした。

A社長は、このような結果になっていることを、毎年のようにモヤモヤとしていると話してくれました。
どう考えても、現場がちゃんと取り組んでくれているようには見えない。だからそんなことじゃダメだと言いたい。でも、結果自体は良くなっているので、現場を悪く言えない。悪く言いたいわけではないけど、このモヤモヤはどうすれば解決するのか、そんな状態でした。

モヤモヤの正体は何か

目標値の達成が経営目標の達成につながっているとはとても言えない、論理的なストーリーになっていないのです。それは、現場の取り組み内容の設定時点で、すでにそのストーリーは破綻しているのです。
そして、現場の管理者がA社長が思っているような「管理」をしてくれない、A社長が聞きたいことを「報告」してくれない、結局自分で数字合わせをして「効果」があったことにしている。社長が思っていた効果ではないけど・・・。というよくない改善のプロセスが構築されてしまっているのです。

現場の状況を把握できるようなデータが収集できていない。
取り組み状況を確認できるようなデータをモニタリングする環境もない。
だから目標値や取り組み内容の設定が現場感覚的。
現場社員が考えた取り組みは、自分たちが単純に困っている内容を取り組みにしただけで、経営目標達成に寄与するような取り組みかどうかは考えられない。
経営目標達成しなくても給与は上がる

さまざまな要素が原因で、現場社員が考える取り組みが経営改善効果のないものとなります。

そして、なぜだかわからないけど目標を達成してしまい、現場社員が自分たちの取り組みの成果だと言い始めた時には収拾がつきません。
社員の能力を把握して、現場に取り組み内容を考えさせているか。現場がわかるかどうかに関わらず、データを収集する環境、モニタリングする環境、体制が構築できているかどうか。これがなければ、提示された取り組み内容がそれでいいのかさえ、社長が判断する材料もありません。
社員がやるって言ったからと社員のせいにしていては、先ほどのモヤモヤは永遠に消えません。

今年も今までと同じやり方で目標設定をしますか?
同じ役割分担で社員に取り組みを任せますか?